大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(く)102号 判決

一件記録を検討すると、本件は、山梨県南都留郡河口湖町における助役選任に関連して発生した贈収賄事件であつて、被告人が、前記渡邊芳民、井出四朗、渡邊稔らと共謀のうえ、右渡邊芳民を河口湖町の助役に就任させるにつき河口湖町町議会の同意を得るため、同町議会議員藤井文彌ほか六名に対し、右同意を求める議案に賛成しかつ他の町議会議員に対しても賛成するよう働きかけて欲しい旨請託し、その謝礼の趣旨で一人あたり五万円ないし一〇万円の現金を供与ないしはその申込みをしたという事案であり、訴訟の経過をみると、贈賄者側、収賄者側を合わせて十名が起訴され、昭和五七年五月六日に開かれた第一回公判において、被告人を除いた九名全員が犯罪事実を認め、関係証拠もすべて同意し、即日その取調べを終えたのであるが、被告人のみが犯罪事実を否認し、前記渡邊芳民、井出四朗、渡邊稔、渡邊富久代らの各供述調書のうち主なものを不同意とし、検察官が不同意書証にかえて右四名の証人訊問を請求して、次回公判期日である昭和五七年五月二五日に右井出四朗の取調べがされる予定となつていることが認められる。

ところで、被告人に対する関係で既に取調べられている関係証拠によれば、現金を供与ないしはその申込みをするという本件の実行行為を担当したのは前記渡邊稔らであつて、被告人はこれに対する共謀共同正犯者としての責任を問われていることが認められるところ、右のような共謀の事実は、性質上関係者の供述によつて立証されるほかなく、被告人が右共謀の事実を強く否認し、共謀者等の供述調書の主なものを不同意としている現状に鑑みると、次回公判期日に最初の証人訊問が予定されているにすぎない現段階において被告人を釈放すれば、被告人において、証人予定者らに対しその供述内容を自己に利益に変更させるべく直接、間接に働きかけをする虞れがあるということができるから、被告人につき刑訴法八九条四号の事由があるというべきであり、また、記録を調べても、被告人に対し裁量によつて保釈を許可するのを相当とする特段の事情があるとも認められないというべきである。

したがつて、被告人につき、右刑訴法八九条四号に定める事由があるとして本件保釈請求を却下した原決定は正当であつて、本件抗告の申立は理由がない。

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